バリアブル印刷は、一枚一枚異なる情報を印刷できる便利なサービスですが、「料金が高くなるのでは?」と心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、バリアブル印刷の料金に関わる要素や、ナンバリングとQRコード印刷の料金比較、さらには用紙や表面加工による料金の違いを詳しく解説します。
1. バリアブル印刷とは?料金に関わる基礎知識
バリアブル印刷の料金について理解するためには、まずその基本的な仕組みと料金に影響を与える要素を知ることが重要です。
1-1. バリアブル印刷の基本
バリアブル印刷とは、DM、クーポン券、チケット、診察券、名刺などに、一枚ごとに異なる情報(氏名、整理番号、QRコードなど)を印刷する技術です。これにより、受け取る人それぞれにパーソナライズされた印刷物を届けられます。
顧客の属性や行動履歴に基づいたパーソナライズされた内容は、受け取り手にとって「自分ごと」と感じられやすく、開封率や反応率の向上に繋がりやすいとされています。これにより、マーケティング施策全体のROIを高めることが期待できます。

1-2. バリアブル印刷の料金に関わる主な要素
バリアブル印刷の料金は、主に以下の要素によって変動します。
- 可変情報の種類・印刷箇所: 氏名や住所といった文字情報、連番、QRコード、バーコードなど、可変情報の種類や1枚における印刷箇所が増えるほど、データ処理が複雑になり料金に影響します。
- 印刷部数: 印刷部数が多いほど、1部あたりの単価は下がる傾向にあります。
- 使用する印刷機: バリアブル印刷で使用される印刷機は、部数や内容によって使い分けられます
- デジタル印刷機: 少部数の場合や、全ての要素をバリアブル印刷にする場合は、版が不要なデジタル印刷機が用いられます。しかし、印刷部数の増加に伴い、オフセット印刷機と比較して単価は高くなっていく傾向があります。
- オフセット印刷機とデジタル印刷機の併用: 印刷部数が多い場合は、共通デザイン部分をオフセット印刷機で印刷し、可変部分のみをデジタル印刷機で印刷する方法がコストメリットを生む場合が多いです。
- 仕上サイズ: 通常の印刷物と同じく、仕上サイズが大きいほど高くなります。(使用する用紙量だけでみても、A4サイズ1万枚で名刺サイズ10万枚分になります)
2. バリアブル印刷の料金が高くなる理由
バリアブル印刷の料金が通常の印刷よりも高くなるのには、いくつかの理由があります。詳しくみていきましょう。
2-1. 可変データの準備・設計に時間がかかる
バリアブル印刷では、個別の情報を差し込むためのデータ処理、レイアウト設計、そして意外と重要な印刷物のエラーチェックに多くの時間と手間がかかります。
これらの作業には専門的な知識と技術が必要となるため、人件費として料金に反映されます。
2-2. デジタル印刷機を使用する特性
バリアブル印刷は、一枚一枚異なる情報を印刷するため、版を作成しないデジタル印刷機の使用が必須になります。
デジタル印刷機は、必要な部数だけを必要なタイミングで印刷するオンデマンド印刷が可能で、小部数でも対応しやすいというメリットがある一方で、部数が増えるほど、従来のオフセット印刷機に比べて1部あたりの単価がやや高くなる傾向があります。

デジタル印刷機 XEIKON についての詳細はこちらもお読みください。
2-3. 工程全体が複雑になる
バリアブル印刷は、通常の印刷に比べて工程全体が複雑になります。可変データの生成、印刷データの結合、その後の検査など、進行管理や品質管理、確認作業の負担が増加します。カスタム設計の印刷であるため、標準印刷よりも多くの工程と繊細な対応が求められるため、その分コストも増加します。
- 進行管理や確認作業の負担増
- カスタム設計の印刷であるため、標準印刷より工程が多い
中でも特に注意を要する作業工程が、品質管理と検査です。印刷される内容が一つ一つ異なるため、誤植やデータの不一致がないかを確認するための厳密な品質管理が求められます。
特に、個別の情報が間違っていた場合の影響が大きいDMなどでは、人の目による確認や専用の検査システムを導入する必要があり、これがコストに上乗せされます。
バリアブル印刷の部数が多い場合は、ランダムにピックアップした印刷物のQRコードを読み取って検査するような、人の目による確認作業には限界があります。QR・可変印刷ラボでは一部の印刷機に印刷紙面の自動検査装置を導入することで、より高い精度での品質管理と検査を行なえます。
印刷紙面の検査装置について
当社では、一部のデジタル印刷機に、コニカミノルタ製のリアルタイムバリアブル印刷照合機能UK-312を導入しています。あらかじめ可変領域のデータを本体にインポートしておくことで、印刷を行いながらリアルタイムでデータと印刷物の照合を行います。目視では確認が難しい乱数やQRコードなども、不一致が発生した時点で気づくことができます。
3. 料金の比較|ナンバリング と、QRコード・バーコード印刷の違い
当社でチケットを印刷する場合の料金比較を見てみましょう。印刷色、用紙、サイズなどの条件が同じ場合です。
単純なナンバリングと、QRコード/バーコード印刷を含む場合とでは次のように異なります。
3-1. ナンバリング(座席番号)の場合
単純な数字の可変(ナンバリング)は、データ処理が比較的シンプルです。そのため、工程が少ない分、比較的安価に提供できます。
例:1,000部で66,000円〜

3-2. QRコード、または バーコード印刷を含む場合
QRコードやバーコード印刷を含む場合、単に数字を差し込むだけでなく、個別のデータ生成と、読み取りを考慮したレイアウト設計が必要です。また、印刷データ自体も重くなる傾向があるため、その分コストが増加します。
例:1,000部で75,000円〜

3-3. バリアブル印刷の料金比較早見表
印刷内容 | 可変情報内容 | 参考料金(1000部) | 単価 |
ナンバリングのみ | 座席番号など | 66,000円 | 約66.00円 |
バーコード、またはQRコード入り | 名前+URLなど | 75,000円 | 約75.00円 |
※バリアブル要素以外の商品仕様は同じ条件で、下記の場合とします。
印刷色:表面カラー / 裏面なし
サイズ:200×70mm以下
用紙:マットコート110㎏
印刷後加工:ミシン1本・化粧断裁
送料:1箇所送料込み(沖縄・離島除く)
4. 料金の比較|印刷用紙や表面加工による違い
当社で卓上POPを印刷する場合の料金比較を見てみましょう。
印刷面に個別QRコード+店舗名等1箇所迄のバリアブル印刷をする条件が同じで、印刷用紙と印刷後加工が異なる場合です。
バリアブル印刷の料金が高くなってしまう、費用面が心配という場合でも、用紙の違いなどによりコストを抑えられる場合があります。
4-1.QRコード入りプラスチックPET 卓上POPの場合
長く使えるPET素材タイプの卓上POPは、最も料金が高くなります。しかし、耐久性が高く、数ヶ月以上使い続けられるため、長期的な視点で見るとコストパフォーマンスに優れる場合もあります。
例:100枚で68,000円〜
4-2. QRコード入り コート紙(ラミネート加工)卓上POPの場合
名刺やポストカードに使われる厚めのコート紙に、表面にPPラミネート加工を施したタイプです。価格と耐久性のバランスが良く、コストパフォーマンスに優れています。
例:100枚で64,000円〜
4-2. QRコード入り コート紙卓上POPの場合
名刺やポストカードに使われる厚めのコート紙を使用したタイプです。最もリーズナブルですが、防水ではないため、短期間の施策向けとなります。
例:100枚で50,000円〜
4-3. QRコード入り卓上POPの料金比較早見表

印刷用紙 | 表面加工 | 耐久性 | 参考料金(100枚) | 単価 |
プラスチックPET | なし | 高 | 68,000円 | 約680.00円 |
コート紙 180kg | 片面マットPPラミネート加工 | 中 | 64,000円 | 約640.00円 |
コート紙 180kg | なし | 低 | 50,000円 | 約500.00円 |
※用紙と表面加工以外の商品仕様は同じ条件で、下記の場合とします。
印刷色:表面カラー / 裏面なし(展開時)
サイズ:展開サイズ(90×290mm)
バリアブル印刷:印刷面に個別QRコード+店舗名等1箇所迄
送料:1箇所送料込み(沖縄・離島除く)
5. バリアブル印刷は「安さ」より「正確さ」と「技術力」が重要
バリアブル印刷を検討する上で、料金はもちろん重要ですが、それ以上に「正確さ」と「技術力」が鍵となります。
5-1. ズレやエラーが致命的になるバリアブル印刷
バリアブル印刷では、わずかなズレやデータのエラーが致命的な問題を引き起こす可能性があります。例えば、QRコードは数ミリのズレで読み取れなくなることがあります。また、データミスで宛名やチケット情報が不一致になると、イベント運営の妨げになったり、顧客からの信頼を失ったりする可能性もあります。
関連記事:サイズ・余白は大丈夫?QRコード印刷で失敗しないための万全ステップ!
5−2. 可変データ処理は「印刷+プログラム」の連携が重要
バリアブル印刷における可変データ処理は、単なる印刷工程だけではありません。
正確なデータ生成、厳密な検証、そして印刷に最適なデータ構造への最適化が必要です。特にQRコード付き印刷は、印刷技術とIT技術の融合が不可欠であり、高い専門性が求められます。
6. まとめ|高品質なバリアブル印刷で、確実に伝わる印刷物を
6-1. バリアブル印刷の料金は、精度と手間に比例する
バリアブル印刷の料金は、可変情報の多さや複雑さ、それに伴う印刷工程やデータ処理の複雑さに比例して高くなる傾向があります。特にQRコード印刷では、読み取り精度と整合性が非常に重要になります。
しかし、バリアブル印刷によってパーソナライズされた内容は、受け取り手にとって「自分ごと」と感じられやすく、通常の印刷物よりも高いエンゲージメントや効果が期待できるため、マーケティング施策における価値は非常に高いと言えます。
また、自社プラットフォームへの導入・登録業務など、個別認識させるためのツールとして活用する事で、顧客や利用者の負担を減らすことが出来るという価値もあります。
コスト面が心配な場合でも、用途に合わせた用紙の選定や加工方法を工夫することで、費用を抑えることも可能です。
6-2. 印刷品質とデータ精度を両立するなら、実績ある印刷会社に依頼を
バリアブル印刷は通常の印刷に比べ、データの準備や工程が複雑になります。また、設定ミスによるエラー等を起こさないために慎重な取り扱いが求められます。
そのため、単なる「安さ」だけでなく、「安心して任せられる体制」を持つ、実績豊富な印刷会社を選ぶことが重要です。高品質なバリアブル印刷によって、確実に情報が伝わる印刷物を実現しましょう。
ご予算に限りがあるが、コストを抑えながら品質も担保したバリアブル印刷をお探しの方は、ぜひ、お気軽にご相談ください!