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オンデマンド印刷とオフセット印刷の違い|デジタル・バリアブル印刷との関係性も徹底解説

2025年9月3日 (最終更新 2025年9月3日)

目次

印刷物を制作する際、「オンデマンド印刷」と「オフセット印刷」のどちらを選ぶべきか迷う方は多いのではないでしょうか。近年は、環境への配慮とコスト効率の両立が求められる中、印刷方式の選定がより重要なポイントとなっています。

この記事では、それぞれの印刷方式の特徴と違いを丁寧に解説し、さらに近年注目されている「バリアブル印刷」や「デジタル印刷」との関係性についても掘り下げます。環境負荷やグリーン購入法との関連性にも触れながら、持続可能な印刷選びのヒントをお届けします。

1. オンデマンド印刷とオフセット印刷の違い

印刷物の目的や部数、納期によって最適な印刷方式は異なります。ここでは、代表的な2つの印刷方式の特徴と使い分けのポイント、環境面から見た違いを整理します。

1-1. オンデマンド印刷とは?

オンデマンド印刷は、版を必要とせず、デジタルデータから直接印刷できる方式です。必要な部数を必要なタイミングで印刷できるため、小ロット・短納期に最適です。主にレーザープリンタやインクジェットなどのデジタル印刷機を使用します。

デジタル印刷機による印刷の光景

小ロットの印刷物に最適な方式ですが、近年では、オンデマンド印刷の単価が下がってきたことに加え、デジタル印刷機の品質が向上してきたことから、大部数でもオンデマンド印刷だけで対応するケースも増えてきています。

環境面のメリット:

  • 余剰在庫や廃棄物の削減
  • 製版工程が不要なため、化学薬品やアルミ資源の使用を抑制
  • グリーン購入法の基準にも適合しやすい

1-2. オフセット印刷とは?

オフセット印刷は、版を作成して大量印刷を行う伝統的な方式です。大部数での印刷に向いていますが、初期コストが高く、小ロットには不向きです。

オフセット印刷の「版」をセットする風景

色再現性に優れる方式のため、特に色出しなどにこだわりたい場合は高精度なオフセット印刷専門の印刷会社に依頼するとよいでしょう。

環境面の課題:

  • 製版に伴う化学薬品(湿し水・現像液)の使用
  • 廃液・CO₂排出の発生
  • 予備印刷やテストによる紙ロスが多く、小ロットでは環境負荷が高まる

2. 環境負荷の観点から見る、オンデマンド印刷とオフセット印刷の違い

印刷方式の選択は、単なる技術的な違いではなく、企業の環境姿勢や社会的責任を映す重要な判断材料です。

印刷物の制作において「環境への配慮」が重要な選定基準となりつつあり、特にオンデマンド印刷やデジタル印刷の技術進化は、環境負荷の低減と柔軟な対応を両立させる手段として注目を集めています。

2-1. 印刷物の環境負荷に注目が集まる理由

近年、印刷物の制作において環境負荷に注目が集まっています。

地球温暖化や資源枯渇といった環境問題への対応が急務となっていることが背景にあります。企業活動においても、環境への責任を果たす「サステナビリティ経営」への移行が進み、印刷物の選定や制作方法がその姿勢を映す重要な要素となっています。

さらに、デジタル印刷技術の進化と普及により、必要な分だけを効率的に印刷することが可能になりました。従来の大量一括印刷と異なり、在庫ロスや廃棄物の削減といった環境面でのメリットがあります。

2024年に行われた、印刷業の経営者・役員・管理職を対象とした兼松経営株式会社による「デジタル印刷技術の導入に関する調査」によると、回答者の56%が環境負荷軽減に貢献できると答えており、デジタル印刷の重要性がさらに増していくことが示唆されています。

加えて、法規制の強化や業界団体による環境目標の設定など、制度面からの後押しも進んでいます。経団連は、「2050 年カーボンニュートラルに向けた印刷業界のビジョン」を策定しており、CO₂排出量の削減目標などの行動計画を提示しています。

消費者や発注者の間でもSDGsへの関心が高まり、印刷方式の選択が企業の信頼性やブランド価値に直結する時代になっています。

参考)
2050 年カーボンニュートラルに向けた印刷業界のビジョン|経団連カーボンニュートラル行動計画 2024年度フォローアップ結果 個別業種編
デジタル印刷技術の導入に関する調査(2024) – 兼松経営株式会社

2-2. グリーン購入法とは?

印刷物の制作において「環境への配慮」はますます重要なテーマとなっています。では、具体的にどのような基準があるのでしょうか?その指針となるのが、国が定めた「グリーン購入法」です。

グリーン購入法は、国や自治体が環境負荷の少ない製品を優先的に調達する制度です。印刷物においても、古紙パルプの使用割合や総合評価値、使用されるトナーやインクの化学安全性などが基準となります。

各自治体にもそれぞれ独自のガイドラインや推進方針があり、自治体によって環境配慮の基準や証明書の様式が異なる場合がありますので、各自治体ガイドライン(「東京都グリーン購入ガイド」等)をご参照ください。
参考)グリーン購入法について (グリーン購入法.net)|総務省

2-3. オンデマンド印刷とオフセット印刷、印刷方式別の環境への影響

印刷方式によって、環境への影響は大きく異なります。

オンデマンド印刷は、環境負荷の少ない印刷方式として評価されています。必要な分だけを必要なタイミングで印刷できるため、余剰在庫の発生や印刷物の廃棄を大幅に抑えることができます。また、版を使用しないため、製版に伴う化学薬品やアルミ資源の消費もありません。

一方、オフセット印刷は大量印刷に適しているものの、版材の製造や交換に化学薬品(湿し水や現像液など)を使用するため、CO₂排出や廃液の発生が避けられません。

さらに、予備印刷やテスト印刷による紙のロスも発生しやすく、小ロットでの運用では特に環境負荷が高くなる傾向があります。

このように、印刷方式の選択は単なる技術的な違いにとどまらず、企業の環境配慮や持続可能性への姿勢を示す重要な要素となっています。SDGsやCSRの観点からも、オンデマンド印刷のような低環境負荷な手法が今後ますます求められるでしょう。

3. 「バリアブル印刷」・「デジタル印刷」との関係性

3−1.デジタル印刷の柔軟性

オンデマンド印刷は、少部数から個別対応まで柔軟に対応できるため、現代のマーケティングに不可欠です。このオンデマンド印刷の実現には、デジタル印刷技術が不可欠です。

デジタル印刷とは、版を使わずにデジタルデータから直接印刷する技術です。代表的な方式には、レーザー方式やインクジェット方式があります。版が不要なため、印刷内容の変更が容易になり、1枚ごとに異なるデータを出力することが可能になります。

オンデマンド印刷は、まさにこのデジタル印刷技術を活用した運用形態であり、印刷工程の自動化・省力化・高速化を支えています。

3−2.バリアブル印刷の可能性

バリアブル印刷(可変印刷)はデジタル印刷の特性を活かして、印刷物ごとに内容を変える技術です。たとえば、宛名・QRコード・バーコード・画像・メッセージなどを一枚一枚変えて印刷することができます。

バリアブル印刷はそれなりのコストがかかるというイメージですが、近年のデジタル印刷技術の発展により、オンデマンド印刷のコストが下がって利用されるシーンが増えてきています。

このバリアブル印刷は、オンデマンド印刷の応用領域のひとつであり、パーソナライズされたDM、名刺、チケット、製品ラベルなどに活用されています。マーケティングや顧客体験の向上に直結するため、CRMやデジタルマーケティングとの親和性も高いです。

従来のオフセット印刷では、同一内容の大量印刷が前提で、内容ごとに版を作成する必要があるため、1枚1枚内容の異なるバリアブル印刷は出来ません。

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3−3.オンデマント×オフセット印刷の ハイブリッド戦略

オフセット印刷ではバリアブル印刷が出来ないと前述しましたが、オンデマンド印刷とオフセット印刷を組み合わせることで、品質と柔軟性を両立したバリアブル印刷戦略も可能です。

たとえば、ベースとなるポスターやチラシ・チケットは高精細なオフセット印刷で大量に作成し、地域や店舗ごとに異なるQRコードやキャンペーン情報などは、オンデマンド印刷によるバリアブル印刷で個別対応する方法です。

例えば次のような場合で、ハイブリッド運用をご提案した事例があります。

ハイブリッド印刷のコスト試算 事例:

ハイブリッド印刷がコスト削減に繋がる具体例として、30,000枚の名刺サイズカラーカード印刷のケースをご紹介します。

通常、この規模のカラー印刷では、単価が1枚あたり4円程度になることが多いです。
しかし、全く同じ印刷仕様でハイブリッド印刷(共通部分はオフセット、可変部分はデジタル印刷)を採用することで、単価を約3円30銭まで下げることが可能です。このように、大幅なコスト削減が見込まれるケースでは、ハイブリッド印刷をご提案しております。

このようなハイブリッド運用により、コスト削減のほか、ブランドイメージを損なうことなく、ターゲットに合わせたパーソナライズを実現できます。特に販促物やイベント告知など、情報の一部を地域・時期・顧客層に応じて変える必要があるケースでは、非常に効果的です。

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4. 活用シーン別の印刷方式

それぞれの印刷方式には、得意とする用途があります。目的や部数、個別化の有無に応じて、最適な手法を選びましょう。

5. まとめ|印刷物の依頼を検討されている方へ

オンデマンド印刷とオフセット印刷の違いを、表にまとめました。この表を、印刷物のご依頼を検討される際の参考にしていただければ幸いです。

項目オンデマンド印刷オフセット印刷
版の有無不要必要
適した部数小ロット・少部数大量印刷
納期短納期時間がかかる
コスト小ロットで低コスト、
大量だと割高になる場合も
大量だと低コスト
小ロットは不向き
印刷品質最新機器なら高品質色再現性に優れる
バリアブル印刷の可否可能原則不可・非効率
環境負荷低(廃棄ゼロに近い少量印刷)高(余剰印刷・版廃棄)
表1. オンデマンド印刷とオフセット印刷の比較まとめ

印刷物の目的・部数・納期・コスト・個別化ニーズに応じて、最適な印刷方式を選ぶことが重要です。バリアブル印刷やデジタル印刷の技術進化は、パーソナライズ時代の可能性を広げています。

オンデマンド印刷とオフセット印刷のハイブリッド活用も視野に入れ、柔軟な対応を検討しましょう。20年近くバリアブル印刷に携わる「QR・可変印刷ラボ」では、環境に配慮したデジタル印刷機「XEIKON」を導入。使用するトナーはエコフレンドリーで環境に危害を加えないことが証明されており、持続可能なモノづくりを支えています。

印刷の最適化からエコ対応まで、QR・可変印刷ラボが専門知識と実績でサポートいたします。まずはご相談ください。

aida_tetsuya

この記事を書いた人

間(あいだ) / 高山印刷(株)東京営業所長

1999年入社時は当時里なMacに触れたくてDTPを担当し、2005年からは東京営業所長。 バリアブル印刷には初代オンデマンド印刷機導入時より20年近く携わっており、専門分野としてあれこれ知識を貯めてお客様に還元しています。