この記事で紹介する差し込み印刷は、Windows / Mac いずれの Office でも可能です。
複数の取引先に郵便物を発送したり、イベントなどの招集文書の宛名部分だけを変更して作成したり…。普段の業務で、1枚1枚異なる内容の印刷が必要となることって、結構ありますよね。
実は、Excel と Word を使って、1枚1枚異なる文書を効率的に作成できることをご存知でしたか?
Word の「差し込み印刷」機能と Excel を組み合わせることで、印刷会社に頼まなくても、効率的に1枚ずつ異なる情報の文書を管理・作成できるんです!
また、わざわざ専用のラベル印刷ソフトを使わなくても、宛名ラベルの印刷までできてしまうんです。
「差し込み印刷」と聞くと難しそうな印象があるかもしれませんが、実はとっても簡単にできますよ。実例や応用アイデアも紹介しているので、ぜひ日々の業務にご活用ください。
数百部を超えるような大量な可変・バリアブル印刷の場合、専門の印刷会社への発注もご検討ください。以下の記事に、バリアブル印刷の詳細を解説しています。
→ バリアブル印刷とは?事例・仕組み・費用・注意点を徹底解説
ExcelとWordを使った差し込み印刷の基本を解説
差し込み印刷は、ExcelのデータをWord文書に挿入する便利な機能です。この機能を使えば、一度に複数の宛名やラベル等の文書を作成できます。
おおまか流れは、以下の通り。
① Excel で名簿や住所録などの個別のデータを作成
② Wordで文書のテンプレート(共通部分)を用意する
③ Wordの差し込み印刷機能を使って、②で作った文書の可変部分に Excel のデータを挿入する
Excel と Word の合わせ技が必要となりますが、その他のツールは必要なく、とてもシンプルに効率化が実現できます。
Word の「差し込み印刷」機能とは?
Wordの差し込み印刷とは、部分的に情報が異なる複数の文書を作成するのに役立つ機能です。標準で Word に搭載されています。
例えば、名簿や住所録などのリストをあらかじめ作成しておき、それを可変部として Word 文書に挿入することで、はがきや宛名ラベル、DMなどの印刷物に簡単に個別の内容を差し込むことができます。
差し込みデータの元としては、Word だけを使ってリストを新規作成・保存したり、外部のデータベースを参照したり、同じ PC に入った Outlook のアドレス帳が使用することができます。
Excel データを活用して Word 文書を作成するメリット
なかでも今回は、 Word に加えて Excel を使って差し込みデータのリストを作成する方法を推奨します。
Word 内部でもリストを作成・保持することができますが、データの更新や追加といったメンテナンス性を考えると、得意分野である Excel に任せた方が効率的であるためです。
Excel データを修正すると、自動的に Word 側にも反映してくれるのがポイントです。
また、もともと得意先リストなどが Excel で管理されている場合には、宛名送付リストのデータの場所もこちらに一元化することで、情報の正確性も保たれ、データ未更新等のミスやエラーを防ぐことが出来ます。
このように、Excel データを活用して Word の差し込み文書を作成することで、効率的かつ正確な文書作成が可能になります。
実践!ExcelデータをWordに差し込むプロセスの解説
ここからは、Excel と Word による差し込み文書の実践として、ステップごとに解説していきます!
なお、画面イメージには Windows 版Excelを利用していますが、Mac 版でもメニュー名などは共通です。Mac の方もお試しください。
1)Excelで差し込むデータの作成とフォーマット設定
早速、Excel を使用して差し込むデータを作成します。
まずは新しいシートを開いて、必要な項目を入力していきましょう。例えば、宛名や住所などの情報です。
データを整理しやすくするために、1行目には各列のタイトルを記載するようにしましょう(見出し/ヘッダー行とよびます)。
見出しおよびデータの入力が完了したら、次はデータフォーマットの設定を行って行きます。
これには、数値、日付、文字列などのデータ型を正しく指定することが含まれます。例えば、電話番号の場合は「0」という先頭文字が省略されないように、文字列として設定することが重要です。
設定が完了したら、シートを保存し、ファイル名をわかりやすく指定しましょう。
更新をかけながら繰り返し使っていくことを想定して、「24年1月開催セミナー案内送付リスト_2311.xlsx」のように、日付の情報を入れておくと、後々の運用作業で便利ですね。
Excelファイルの作成が完了したら、次は、Wordで差し込み文書のテンプレートを作成する作業に移ります。
2)Wordで差し込み文書のテンプレートを作成
今度は Word を開き、新しい文書を開きます。次に、差し込むデータに合わせたレイアウトを考え、宛名や住所などの情報が入る場所を決めます。
そして、差し込みデータが入る以外の共通箇所の文書を完成させてください。
フォーマットが整ったら、「差し込み」タブから「宛先の選択」「既存のリストを使用」ボタンをクリックし、差し込むデータを選択していきます。
ファイルの参照ダイアログボックスが開いたら、先ほど作成した Excel ファイルを選択します。シート名、データ範囲もあわせて指定していきます。
この時点では、Word 文章上にはとくに何も反映されませんが、「差し込み文書」タブ内の「アドレス帳の編集」ボタンをクリックすると現れるボックス上で、 Excel から読み込んだデータがきちんと保存されていることが確認できます。
3)WordとExcelデータの関連付けと差し込み設定
準備ができたところで、Word と Excel データの関連付けを行い、差し込み設定を完了していきます。
「差し込み文書」タブ内の「差し込みフィールドの挿入」ボタンをクリックすると、先ほどリストとして指定した Excel ファイルからフィールド(列)名を指定して、文書内の任意の場所に挿入できます。
関連付けが完了したら、差し込み設定の最終確認を行いましょう。
「差し込み文書」タブ内の「結果のプレビュー」ボタンをクリックすると、リスト内の最初のデータを使って、差し込み結果を確認できます。ここで宛名や住所の位置が正しいかしっかりチェックしましょう。
きちんと反映されていますね!
矢印をクリックしていくと、他のデータが入った時の様子もプレビューできますよ。文書が複数ページにまたがる場合は、ページ間のデータのつながりも確認しておくと良いでしょう。
4)一度に複数の文書を印刷する方法
最後に、別々のデータが反映されたそれぞれの文書を一気に印刷していきます。
「差し込み文書」タブの一番右、「完了と差し込み」をクリックし、「文書の印刷」を選択します。
次に、印刷ダイアログボックスで「すべて」を選択するか、印刷範囲を指定します(データにテスト用のダミーなどが含まれている場合は、ここで除外することもできます)。
最後に、印刷ボタンをクリックして印刷を開始します。これで、複数の可変データが適用されたすべての文書を、個別のドキュメントとして一気に印刷することができますよ。
Word による宛名ラベルの印刷
ここまでは通常の Word 文書を例にとって、宛名部分の差し込み印刷の方法をお伝えしました。
同じくExcel と Word を使った差し込み印刷で、封筒などに貼る郵送先宛名ラベルを作ることもできるんです。
まず Excel で、宛名ラベルに使用する宛名や住所のデータを入力したシートを作成し、保存するところまでは同様です。
次に、Wordで「差し込み文書」タブの「差し込み印刷の開始」から、「ラベル」テンプレートを選択します。
すると、一般的なラベルメーカーの提供するテンプレートを Word 上に読み込むことができます。
ここではラベル台紙の「エーワン」の商品「A-ONE 26501」を選択してみます。
すると、台紙通りのテンプレートが Word に表示されるので、これまでと同様に「差し込みフィールドの挿入」からデータをラベルのレイアウト上に配置していきます。
テンプレートに従って宛名ラベルを作成したら、「差し込み文書」タブの「複数ラベルに反映」ボタンをクリックすると、接続している Excel のデータが他のラベルにも反映されますよ!
この状態で対応した台紙をプリンターにセットして、印刷に進めば、ラベル印刷も完成です。
どうですか?思ったよりも簡単でしょう。
困ったときのトラブルシューティング
差し込み印刷に関するトラブルが発生した場合、まずは落ち着いてエラーメッセージや状況を確認て、原因を特定します。
解決できない場合は、Microsoft Office のヘルプや、オンラインのフォーラム、FAQなどの情報を参照し、対処方法を調べて試してみましょう。
「データが見つからない」エラーの対処法
「データが見つからない」エラーは、差し込み印刷時に Excel のデータが正しく参照されていないことが原因です。
まず、エクセルファイルのデータ範囲を確認し、適切な範囲が選択されているかチェックします。次に、参照している Excel ファイルの保存場所やファイル名が変更されていないか確認しましょう。ファイル名が変更されている場合は、Word 文書内で参照先を更新してください。
また、Exce lシートのデータに余分な空白や改行が入っていないかチェックし、必要に応じて修正を行いましょう。
Word 側でも、差し込みフィールドの設定が正しいかどうか確認が必要です。エラーが解消されたかどうかは、プレビューボタンで確認できます。
セルの書式やデータが正しく表示されない場合の調整方法
意図した書式通りに表示されないとき、Excel に戻って書式設定を確認してみましょう。
日付や金額など、特定の形式で表示されるべきデータに対して適切な書式設定がされているかをチェックしましょう。
さらに、Excel で表示されるデータの桁数が多い場合、Wordで正しく表示されないことがあります。Excelで表示される桁数を調整し、再度差し込み印刷を行って、問題が解決されるか検証しましょう。
最後に、Word と Excel 間の互換性に問題がないかも、改めてチェックしてください。次のセクションでくわしく解説します。
WordとExcelの互換性やバージョン確認の注意点
Word と Excel の互換性やバージョン確認の注意点について説明します。互換性の問題は、差し込み印刷時にデータが正しく表示されない原因となることがあります。
まず、使用しているWordとExcelのバージョンが同じであることを確認しましょう。
異なるバージョン間で差し込み印刷を行う場合、一部の機能が正しく機能しないことがあります。
次に、Word 文書と Excel ファイルの両方を Office の最新バージョンにで開いておくことが重要です。Microsoft は定期的に Office アプリケーションの更新を行っており、新しいバージョンには問題の解決策が含まれている可能性があります。
もし、Word を互換モードで開いている場合は、通常モードへ変換して試してみてください。互換モードでは、新しい機能が制限されるため、正常な差し込み印刷が行えない場合があります。
差し込み印刷を活用した実例と応用アイデア
差し込み印刷を活用した実例と応用アイデアを以下に具体的に説明します。
営業活動での名刺交換後、効率的に個別のお礼状を作成
- イベント参加者への案内状や、アンケートの送付
- 社内での年賀状や、お中元・お歳暮の贈答品の宛名作成
- 顧客情報を一覧化した資料の作成
- 会員向けの個別化されたビジネスプランの提示
このように、差し込み印刷は個別の文書作成を効率化し、これまで手作業の労力を要していた業務のスピードアップが期待できます。
ぜひ、さまざまなシーンで積極的に活用してみてください。
顧客データを使った効果的なダイレクトメール発送のコツ
顧客データを使って効果的なダイレクトメールを発送するためには、以下のポイントを押さえましょう。
顧客データの正確性を確保
まず、顧客データの正確性を確保することが重要です。とくに、所属会社と紐づいたリストでは、転職や転籍、異動などを理由に、毎年2〜3割が無効なデータになっていくと言われています。
定期的に住所や氏名、部署などの最新情報を把握してデータベースを更新しておくことで、間違いのないダイレクトメールが届くようにします。
セグメント別にアプローチ
顧客をセグメント別に分けたアプローチも、DM や招待状では効果的です。
顧客の属性(居住地域・年代など)や購買履歴に応じて、ターゲットを絞り込んでダイレクトメールを送付することで、反応率が向上します。
メッセージの個別化
さらに、メッセージを個別化することで、顧客へのアピールが強化されます。例えば、本文内に顧客の名前を挿入することで、自分宛に書かれた文書であるという印象が強まります。
少し上級のテクニックですが、過去の購入商品を参考にしたおすすめ商品も Excel の顧客データに入れておくことで、自動的に顧客の興味を惹く内容が文書に挿入できます。
まとめ:ExcelとWordの差し込み印刷で効率アップ!
ExcelとWordの差し込み印刷を活用することで、招待状や年賀状の一斉送付やダイレクトメール発送が効率よく行えます。
データの整理やメッセージの個別化など、工夫次第でさらなる効果が期待できます。今回ご紹介した方法をぜひお試しください。
今回ご紹介した Excel・Word の方法では、数十部程度の印刷物なら自分で問題なく印刷できるかと思います。
ただし、数百部を超える印刷となると、データの整備や整合性チェックなども含めて、ご自身でハンドリングしていくのはかなり難しくなってきます。
そのような大規模かつ失敗できないバリアブル・可変印刷は、ぜひプロに任せてください!
数百万部レベルの大規模バリアブル印刷も手掛けている高山印刷が、親身になってお手伝いさせていただきます。