QRコードとバーコードはいずれも、製造や小売業界の倉庫管理において、商品の追跡・監視のために広く利用されています。しかし、これら2つの技術の違いを明確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか?
この記事では、QRコードとバーコードの違いと、それぞれのメリットについて解説します。
結論から言うと、それぞれの特徴は代表的な用途は以下の通りです。
バーコードは、横方向に伸びた線とスペースの組み合わせで表現されるコードで、主に商品の管理に用いられます。
一方、QRコードは、デンソーウェーブ株式会社が開発した日本発の技術で、縦横の格子状のパターンが特徴です。多くのデータを格納できるため、様々な情報を管理することができます。
どちらの技術を選択すべきかは、利用目的や状況によります。
それぞれのよく似た技術が、なぜこのような特徴を持っているのでしょうか? 技術的な成り立ちや背景も含めて、以下に解説していきます。
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仕組みとデータ格納量
QRコードとバーコードの違いは、主にデータ容量や読み取り方法にあります。
バーコードの仕組みと特徴
バーコードは、横方向に並ぶ縦線が数字を表す一次元コードで、商品の識別や在庫管理に用いられています。
縦線1本1本の太さとそれらの組み合わせが、任意の文字を表しています。
このようなシンプルな構造ゆえ、バーコード内に格納できる情報量が限られているという弱点があります。
実は「バーコード」というのは総称であり、バーコードの中にも「JANコード」や「ITF」、「CODE39」などの規格があります。
それぞれの規格ごとに格納できる文字のタイプや桁数は異なっており、たとえば、日本で一般的に使用される商品識別コードである「JANコード」や物流でよく使われる「ITFコード」は数字のみしか扱うことができません。
格納数の多いバーコード規格であっても、英数字100桁程度が上限となっています。
それまで人間が認識できなかったような桁数の情報を簡単に管理できるという画期的な発明出会ったため、1950年代より、物流・製造業界で広く活用されてきました。
QRコードの仕組みと特徴
一方、QRコードは前述のようなバーコードの課題を克服するために、デンソーウェーブ株式会社が独自に開発した二次元コードです。
横方向だけでなく縦方向にもデータを持つことができます。この、縦×横の2方向の縞模様が、「二次元」コードと呼ばれる所以です。
縦線のみだったバーコードと比較して、データ容量が大幅に増し、漢字や画像など多様な情報を格納できます。
汚れや破損があっても読み取れる認識性の高さや、スマートフォンで簡単に読み取れる利便性が特徴で、爆発的に普及しました。
QRコードのバージョンにもよりますが、最大で数千桁にもおよぶ文字数を格納できるため、さまざまな用途に対応可能です。
QRコードは、画像認識技術を利用して読み込むため、角度や距離によって歪んだ画像でも認識できる高い精度を持ちます。
また、QRコードには誤り訂正機能があり、一部が欠けていても正確にデータを読み取ることができます。これらの特徴から、携帯電話やスマートフォンでの読み取りが容易になり、ビジネスや個人利用、広告業界など幅広い分野で活用されています。
QRコードの仕組み・構造についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてお読みください!
印刷に求められる性能
同じ情報量を印刷する場合、バーコード・QRコードそれぞれで印字スペースの大きさが変わります。
前述の通り、バーコードは一方向にしかデータを記録できないため、記録密度が低く、同じ情報量を記録する際にはQRコードよりも大きなスペースが必要です。
一方、QRコードは二方向にデータを記録できるため、記録密度が高く、小さい印字スペースで情報を記録できます。
ただし、どちらも印刷品質には敏感で、無理やり小さく印刷した場合、読みづらくなり、場合によっては機能しなくなることがあります。
しかし、QRコードにはエラー訂正機能があり、部分的に欠損した印刷でも読み取れることがあります。
- バーコード:一方向のデータ記録、印字スペースが大きい
- QRコード:二方向のデータ記録、印字スペースが小さい、エラー訂正機能あり
印刷品質に注意し、適切なサイズでのコード配置が重要です。
QRコードの印刷時における注意点は、以下の記事もご参照ください。
→ サイズ・余白は大丈夫?印刷会社が教える、失敗しないQRコード印刷の必見ポイント
読み取りデバイス
バーコードスキャナー、バーコードリーダーには、専用の装置や機器が広く使われています。
専用装置といっても簡単な仕組みなので、安いものだと数千円程度で手に入ります。読み取った文字列を PC と接続して、メモ帳や Excel などに記録するといったサードパーティのアプリなども公開・販売されています。
対照的に、より汎用性の高い QRコードの場合、ほとんどスマートフォンのカメラで読み取ることができます。
また、QRコードの四隅のうち3箇所に設けられた「切り出しシンボル」の存在によって、読み取る際にどの向きにあっても、正しくコードを読み取ることができるのもQRコードならではの特徴です。
読み取りの速度はカメラの性能や搭載されたソフトウェアに依存しますが、どうしても情報量が多くなる QR コードの特性上、時間がかかるものも存在します。
デンソーウェーブによる日本発の技術「QRコード」開発秘話
意外と知られていないのですが、実は QR コードは日本発の技術です。
トヨタの部品メーカーであるデンソーが、トヨタグループ内のかんばん方式で使う各パーツの管理において、情報量を増やす目的で始まりました。
かんばん方式はトヨタ独自の生産方式で、多くの製造業で採用されています。「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ生産する」という考え方が基本です。工場など汚れのつきやすい現場でもなるべく誤りのない読み取り性能で、多くの情報を素早く認識する、ということが、かんばん方式による生産管理の生命線となっていました。
デンソーははじめ、当時普及していたバーコードリーダーの改良版「NDコード」を開発し、トヨタグループ以外にもライセンス販売していました。当時日本中に拡大していたセブンイレブンの POS レジのリーダーなどに採用されたことで、開発原資を得て、さらなる改良に取り組みました。
しかし、独自コードであるNDコードは、数年後に大容量の情報格納や高速読み取りなどの限界が見えてきました。
そこで、ますます増大するグループのニーズに対応していくため、新しい二次元コードとして、「クイックレスポンス」を略した QR コードが新たに開発されました。
このとき、驚くべきことに特許権行使をせず、ライセンス料不要としました。これが功を奏して、業界内での標準化が進み、バーコードリーダーなどの販売市場はデンソーにとって広がりました。(現在、「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標となっています)
やがて90年代にはトヨタグループだけでなく、自動車業界全体で標準化が進みます。2000年代中盤には携帯電話でQRコードが読めるようになったことで、海外製のサービスでも活用されるようになり、一気に世界のスタンダードとなりました。
参考文献: QRコードの奇跡 モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ(小川進・著)
QRコードとバーコード、どちらを選ぶべきか?
総合的に言えば、バーコードの方が一般的に高速に読み取りができ、シンプルなアプリケーションでの利用に向いています。
また、バーコード自体の制作・印刷のコストも比較的低いため、業務上必要不可欠なコード管理には適しています。
商品や製品の管理、在庫・部品の管理など、大量の情報をスムーズに処理していく定型的な業務フローの中では今後も欠かせない存在といえるでしょう。
一方で、QRコードは多様な情報を格納できるため、データの多い環境で使用され、スマートフォンやタブレットを活用するアプリケーションに適しています。
URL や、Wi-Fi の SSID・パスワードの組み合わせなど、文字数や文字の種類が多く、これまでのバーコードの規格に収まらないものも扱うことができます。
汎用性が高く、様々な人に使ってもらえるため、不特定多数のユーザーを想定する用途には QR コードが適しています。
仕様を自社内で決められないという場合も、事業の目的や環境・制約に応じて、弊社からも提案差し上げることが可能です。どうぞお気軽にご連絡ください。
これからのバーコード・QR コードの展望
安定技術となったバーコードと、新たな発展
既存のバーコード規格は、すでに社会インフラを支える安定技術として今後もなくなることはありません。
一方で、既存のバーコード・QRコードのデメリットを克服する新たなバーコード規格もうまれてきています。
たとえば「カラーバーコード(カメレオン・コード)」は、従来の黒白ではなく、赤、青、緑などの複数の色を用いることでデータ容量を拡大しています。
QRコードやバーコードと違ってデザインに組み込みやすいというメリットがあるため、カラーバーコードは、視覚的なアピールやブランド識別、デザインの活用などの目的で使用されることが増えているようです。
ますます拡張範囲を拡張するQRコード
QRコードは元々の生産管理の現場での用途を超えて、インターネットの普及とともに、従来のようにウェブサイトや SNS へのリンク先として使われる用途が一般的になりました。さらに現在は、仮想通貨の支払い、デジタルチケット、身分証明書、感染症対策のための健康証明書など、様々な用途で使用されています。
将来的には、これらの拡張された用途がますます増える可能性があります。
QRコードの標準規格は現在も継続的に進化しており、新たな要件や技術の導入が行われています。ますます多様な分野で利用されて、新たな技術との統合も期待できるかもしれません。