バリアブル印刷(可変印刷)とは、通常の印刷物と違って、一枚一枚情報を変えた印刷物を作成できる仕組みのことです。
ハガキなどへの宛名印刷やチケットのナンバリングは、バリアブル印刷の一例です。
また、バリアブル印刷は難しいものと思われがちですが、マイクロソフトワードやエクセルなどのスプレッドシートと連携して、1部ずつ異なる宛名やナンバリングを印刷する「差し込み印刷」もバリアブル印刷の一形態です。
→ ラベル印刷ソフト不要!Excel と Word で簡単差し込み印刷
最近では、Webシステムやアプリと組み合わせて使用し、キャンペーン登録時に手間をかけずに個別のQRコードを印刷して配布するシーンが増えています。デジタル技術と組み合わせることで、バリアブル印刷の利用範囲が拡大しています。
本記事では、バリアブル印刷の具体例から、その仕組みやコストについて解説し、バリアブル印刷を依頼する際に注意すべきポイントについて詳細に説明します。
高山印刷では、ネット通販印刷サービスでは頼めないちょっと複雑な仕様のバリアブル印刷を得意としています。サービスページをご覧ください。
バリアブル印刷の用途・事例
DMやハガキの宛名印刷
日頃よく目にするDMやハガキの宛名は、代表的なバリアブル印刷です。
宛名の下にある細長いバーコードは「カスタマバーコード」と言って、特定条件を満たす場合に郵便代金が割引になるサービスに使用します。
カスタマバーコードも、宛先の住所と連動して、1枚1枚情報が異なるバリアブル印刷になっています。
入場チケットのナンバリング・座席番号の印刷
イベントチケットに印刷されている個別のナンバリングも、バリアブル印刷の一例です。
チケットによっては、単純な連番だけではなく、イベントホールの座席番号をそのまま印刷する場合や、座席によって金額が変わる場合、また数日間に渡るイベントで日時情報が異なるチケットなどもあります。
抽選券や地域振興券(個別QRコードで専用サイト・アプリ等にアクセス)
システムに読み込むためのバリアブル印刷の観点では、QRコードをスキャンできるモバイルデバイスの普及に伴い、その活用の幅がますます広がっています。
例えば、個別のQRコードが印刷されたショッピングモールの抽選参加券や特典サイトにアクセスするためのカードなどがあります。
また最近では、自治体の地域振興券などで、従来のチケット冊子形式(500円など少額の金券が束になったもの)に代わり、1枚のカードで配布するタイプ(店舗での会計時に繰り返し使え、残高はアプリや専用サイトで確認できる)が増えてきています。
上記以外にも、アイデア次第で様々な活用方法があるのがバリアブル印刷です。ご興味のある方は、高山印刷のバリアブル印刷 お客様事例 も併せてご覧ください。
バリアブル印刷の仕組み
バリアブル印刷には、物理的な版を用いてインクを転写する「オフセット印刷機」とは異なり、デジタルデータを直接印刷物に変換する「デジタル印刷機」と呼ばれる印刷機を使います。
バリアブル印刷の場合、通常のデザインデータに加えて、可変部分用に印刷する情報を扱う「データベース」も必要になります。
ナンバリングやユニークIDのバリアブル印刷の場合
Adobe Illustrator で作成したAiデータやPDFを、デザインデータとして準備します。
ナンバリングが連番の場合は開始番号と終了番号と印刷部数を通知すれば対応できます。
ユニークIDの場合は、バリアブル印刷用データが必要になります。その場合、デザインデータとバリアブル印刷用データの2つを入稿する必要があります。
- デザインデータ:イラストレーター等で作成された固定部分のデザインデータ)
- バリアブル印刷用データ:エクセルやCSVで作成した、番号や宛名などのリスト
豆知識
単純な連番の場合はデータベースの作成・入稿は不要な場合が多いですが、
その場合でも 00001~01000 のように開始と終了番号、桁数を通知するのが間違い防止になります。
また、開始を1000からと指示される場合がありますが、その場合は1000枚だと終了が1999になります。
2000を終了の番号としたい場合は1001が開始番号です。ご注意ください。
QRコードやバーコードのバリアブル印刷の場合
システムでの読み取りを前提としたチケットやクーポン券など、印刷物1枚1枚にそれぞれ異なる QR コードやバーコードを配置するタイプのバリアブル印刷も増えてきています。具体的な事例としては、以下の記事もご覧ください。
→ ユニークQRコードの活用例。ビジネスに差がつく7つの事例を解説
このように QRコードやバーコードをバリアブル印刷する場合、お客様には、画像データではなく、データベースを準備してもらう場合がほとんどです。
印刷会社としては、QRコード・バーコードに変換された画像データよりも、元となっているデータベースをいただく方が、ハンドリングしやすいためです。そのため、入稿情報が画像か CSV データなのかによって、見積金額も変わってきます。
なお、一口にバーコードといってもたくさんの種類があります。バリアブル印刷に対応可能なバーコードの一覧については、こちらの記事をご覧ください。
印刷会社は2つのデータを専用ソフトやプログラムを使って合成して、バリアブル印刷をします。
バリアブル印刷発注時の注意点
デザインにおける可変箇所の扱い
あらかじめ、バリアブル印刷をするスペースをデザイン上で決めておく必要があります。
デザインや配置についての注意点は、以下の記事もご覧下さい。
→ 要チェック!バリアブル印刷があるデザインデータ入稿の注意ポイント(デザイナー向け)
→ 失敗しないQRコード印刷!サイズ・余白などの注意事項(QRコード制作者向け)
納品時の扱い
バリアブル印刷の場合、一括納品ではなく、用途に応じて複雑な納品プロセスが発生することもあります。
例えば、各店舗にあらかじめ決められたIDを納品する等、通常の印刷物と比べ、複雑になります。
ナンバリングやIDについての納品時の順序指定や、店舗等に仕分けして納品するなどの必要がある場合は、発注タイミングで印刷会社に相談しておきましょう。
入稿後では対応できなかったり、追加金額が発生したりする可能性があります。
バリアブル印刷の費用
一般的な印刷との比較
バリアブル印刷は通常の印刷と比べて、多くの工程が必要で、さらに、1枚1枚の印刷物に意味があるため、印刷部数を過不足なく調整することが重要です。
専用の機器と知識が必要であり、実際にバリアブル印刷を扱える印刷会社は限られています。そのため、通常の印刷物と比較してコストが高くなることが一般的です。
作成する印刷物の仕様にもよりますが、通常の印刷物より5割から仕様によっては10割ほど高くなることも考えられます。
一般的なチケットへのバリアブル印刷を想定した費用感については、こちらのページも参考にしてみてください。
バリアブル印刷のコストを抑えるテクニック
ただし、印刷物の用途によっては回避策もあります!
一般的に、印刷サイズが大きいほどバリアブル印刷のコストが上がります。そのため、以下のような代替案でコストを抑えることがよくあります。
- 印刷物を用途別に2つに分けてバリアブル部分についてのみ小さいサイズの印刷物への変更
- 大きいサイズの印刷物に対して、可変部のみシールなどで代用
当社では、お客様の用途をお伺いしたうえで、より適した方法を提案させていただいています。
また、数百枚程度の小ロットとなると、そもそもコストの高いバリアブル印刷の場合、印刷物1枚あたりの単価が数百円となってしまうこともあります。
このような費用感ですと、せっかく販促キャンペーンに使いたいのにコストが合わない… と泣く泣く諦められるお客様も少なくありません。
そこで当社では、100部〜 の小ロットでも、サイズや用紙などの仕様を当社指定に合わせていただくことで、限界まで費用を抑える対応も行っております。ぜひご活用ください。
バリアブル印刷を発注する印刷会社の選び方
様々な案件への実績があること
バリアブル印刷の場合、デザインデータだけではなく、バリアブル印刷用のIDやURL・データベースを準備する必要があります。バリアブルデータとあわせて、デザイン上にどのようにデータを配置・表示するかも考えていく必要があります。
単純なナンバリングでしたら相談等しなくても対応が出来る印刷会社も多いと思います。
しかし、バリアブル印刷の箇所が多かったり条件が複雑になる場合や、ランダムデータ自体の作成が自社では準備できないとなると、バリアブル印刷を得意分野とする印刷会社ではないと対応が難しくなります。
バリアブル印刷が得意な印刷会社は、過去の受注実績から、バリアブル印刷物の使用目的の想定がある程度出来ています。
過去の実績からアドバイスすることも可能で、依頼者の不安や不明点を解消してくれるでしょう。
可変印刷データを扱うプログラム開発能力があること
また、印刷会社が所有しているバリアブル印刷の専用ソフトだけでは対応できない複雑な要件でも、カスタマイズしたプログラムを使って対応できる場合もあります。そのようなプログラムを扱うことができる印刷会社かどうかもチェックポイントです。
当社高山印刷は十数年前よりバリアブル印刷を主力としており、バリアブル印刷の技術・ノウハウには他社様の追随を許さない自信がございます。
また、汎用のバリアブル印刷専用ソフトだけでは対応できないようなカスタマイズしたバリアブル印刷も、多数の実績があります。
複雑な仕様で諦めていた可変印刷物も、ぜひ一度私たちにお問い合わせください。