1. バリアブル印刷の活用が、パーソナライズされた顧客体験の鍵に
かつてのような「一律化された情報提供」から、いまや「一人ひとりに最適な情報提供」へ。顧客体験は今、パーソナライズと即時性の融合によって進化しています。
こうした背景の中、「バリアブル印刷」は印刷物であってもデジタル並の柔軟性を実現する技術として注目を集めています。名前入りの商品パッケージ、イベント向けの個別案内、受付効率化を叶えるQRコード──これらはすべて、顧客体験を高めるバリアブル印刷の可能性の一端です。
2. バリアブル印刷と可変データの基礎知識
「バリアブル印刷」とは、印刷する内容が一枚ごとに異なる技術です。これにより、同じデザインテンプレートを使いながらも、個々に最適化された情報を反映できます。代表的な可変データには、以下のようなものがあります。
異なる種類の可変データを組み合わせることもでき、様々な用途に活用の範囲が広がります。
可変データの種類 | 主な印刷物 | 主な用途 | 使用時の注意点 |
QRコード | チラシ、ポスター、商品ラベル | Webサイトへのリンク、動画コンテンツ、個人ページへの誘導 | サイズ・配置・背景色に注意し、読み取り精度を確保する |
バーコード・ ナンバリング | 会員カード、商品パッケージ、抽選券 | 受付管理、商品識別、キャンペーン応募用 | 誤植や重複を防ぐため、データベースとの連携精度が重要 |
テキスト可変印刷 | ダイレクトメール、招待状、商品パッケージ | 名前・住所・メッセージの個別化 | デザインテンプレートとの整合性を確認し、誤植を防ぐ |
3. 【業界別】バリアブル印刷の活用アイデア
各業界での具体的な活用アイデアを見ていくことで、バリアブル印刷の可能性と応用力がより鮮明になります。
1) 小売・流通業界
- 会員カードやポイントカードに、個別バーコードを利用。顧客情報・購買履歴を管理。
- 商品パッケージにシリアル番号や乱数を印刷し、キャンペーン応募や偽造防止に活用。
- クーポン券に1枚ずつ管理番号や個別のコードを設定することで、利用状況の把握や悪用防止に。
(2) イベント・プロモーション業界
- チケットの座席番号と、バーコードの組み合わせで入場や受付をスムーズに。
- 乱数やユニークな番号を印刷した抽選券やビンゴカードで、抽選イベントを開催。

(3) 教育・出版業界
- 教材や書籍に埋め込まれたQRコードで補足資料にアクセス。
- ナンバリングでイベント資料や試験用紙を管理しやすくする。

(4) 製造・物流業界
- 商品ラベルにバーコードを配置し、効率的な在庫管理を実現。
- ロット番号や製造日など可変情報の印字による品質管理や法規制の遵守。
- バーコードやQRコードでトレーサビリティ情報を提供(製品の原産地や品質情報)。

(5) 観光業、交通・運輸業界
- 団体旅行やツアーで、一人ひとり異なる行程表やおすすめスポット、バス・部屋割りなどを印刷。
- 看板や案内板のQRコードで、省スペースで多言語対応。
- 乗客の落とし物・忘れ物管理にQRコードを利用することで、管理業務を効率化。
(6)ウェディング業界
- 披露宴会場では、QRコード付きテーブルカードで、ゲスト専用のメニューや個別の感謝メッセージを表示。
- ウェルカムバックのリマインダーとして、次のイベント(例: アニバーサリー)の案内を込めた可変メッセージ入りのDM。
(7)医療・ヘルスケア業界
- 診察券に個別のバーコード・QRコードを印刷。スムーズな受付と誤認防止、電子カルテとの連携で管理を効率化。
4. 【テキスト可変印刷の活用事例】コカ・コーラ社の”ネームボトル”
お馴染みのコカ・コーラのボトル。もし、コンビニのドリンクの棚でふと見ると、「コカ・コーラ」のロゴのあるべき位置に、自分の名前が印字されていたらーー。あなたも迷わずに手に取るのではないでしょうか?
コカコーラ社の”ネームボトル”キャンペーンは、2011年にオーストラリアで開催されて大成功を収めました。これをきっかけに、その後世界各国でも開催されて成功を収めてきたキャンペーンです。
日本では、ブラジルで開催された「2014 FIFA ワールドカップ」を盛り上げるために、”ネームボトル”キャンペーンが開催され、”TANAKA”や”SAITO”、”KOBAYASHI”などの250種類以上の名前をデザインしたボトルが販売されました。
商品パッケージの文字列を多数のバリエーションのあるものに変更することは、バリアブル印刷の基本的な使い方ですが、コカ・コーラのボトルというアイコニックなアイテムが「自分のもの」になったかのような特別な体験を演出したことに加え、友人の名前のボトルを購入してシェアする、ペットの犬と同じの名前のボトルとを並べて撮影しSNSにアップする、といった自然な拡散行動が生まれたことが、成功の要因となりました。
さらに、アメリカでは2025年4月「Share a Coke」キャンペーンが復活。おなじみの名前入りボトルに、QRコードによるデジタル体験への誘導が加わり、より一層共有性とカスタマイズ性が高まりました。各国へのグローバル展開は順次展開されているとのことで、今から楽しみですね。
コカ・コーラ社のような大規模なキャンペーンを実現するには、印刷工程だけでなく、複雑なデータ管理やシステム連携も必要不可欠となります。当社単独での提供は難しいケースもございますが、お客様ご指定のシステム開発会社様などとも柔軟に連携させていただき、キャンペーンの成功に向けて、バリアブル印刷領域で知恵を捻らせていただきます!
また、飲料に関してですと、当社でもこれまでに飲料メーカー様向けにペットボトルや酒瓶の首掛けPOP、抽選キャンペーン参加用のシリアル番号印刷など、多数の実績がございます。このようなケースでは、ボトル形状に合わせた型抜きやシール加工、飲料キャンペーン特有の不正防止対策など、商品ジャンルごとの課題検討が避けられません。ぜひ、ご検討の早い段階でお声がけいただければ幸いです。
バリアブル印刷の導入やキャンペーン施策についてお悩みの際は、まずはお気軽「QR・可変印刷ラボ」までご相談ください。お客様のアイデア実現に向けて、最適なソリューションを一緒に考えさせていただきます。
参考情報
- Iconic ‘Share a Coke’ is Back for a New Generation|The Coca‑Cola Company
- コカ・コーラが「みんなのトロフィー」キャンペーン限定デザインの“ネームボトル”を発売!
- 10年ぶりの快挙!世界70か国で話題のコカ・コーラ社「ネームボトル」キャンペーン
- FIFA ワールドカップを盛り上げた「ネームボトル」キャンペーン第1回 “ワクワク”を持続させる3つのフェーズ
5. バリアブル印刷の技術活用における注意点
バリアブル印刷はその柔軟性ゆえに、デザインや印刷設定の複雑さが課題となることもあります。テキスト可変部分に使用できるフォントの種類やサイズの他、特に注意したいポイントは以下の通りです。
- 読み取り精度:バーコードやQRコードは、印刷時のサイズ・配置・背景色が読み取り精度に直結します。
- コストとバリエーション数のバランス:バリエーションが多い場合、印刷工程の効率化とコスト管理が重要です。
- 可変データの安全性と整合性:誤植や重複を防ぐために、データベースとの連携精度が求められます。
関連記事
サイズ・余白は大丈夫?QRコード印刷で失敗しないための万全ステップ!
バリアブル印刷があるデザインデータ入稿の注意ポイント
6. まとめ:さまざまな業界で応用可能!バリアブル印刷を活用するメリットと今後の展望
バリアブル印刷は、顧客との新しい接点を創出するマーケティングツールです。今後はAIやIoTとの連携によって、紙メディアであってもデジタルと融合した体験がより幅広い分野で可能になっていくでしょう。
バリアブル印刷は多様な業界での応用が期待されており、顧客体験の向上や業務効率化に寄与する可能性があります。
例えば、観光業では観光地の混雑状況をリアルタイムで表示するQRコード付き案内板や、個別の旅行プランに基づいたデジタルガイドを提供する仕組みが挙げられます。
医療業界では、患者ごとの治療履歴を反映した個別化された診療計画書や、薬剤情報をQRコードで提供することで服薬指導を効率化する方法が考えられます。
今後は、技術の進化に伴い、より高度なパーソナライズやデジタルとの融合が進むことで、バリアブル印刷活用の可能性はさらに広がるでしょう。
バリアブル印刷を効果的に活用するには、正確な印字技術はもちろんのこと、データベースとの連携など経験と技術力を備えた印刷会社との協力が不可欠です。ぜひ、バリアブル印刷に携わって20年近くの実績を持つ「QR・可変印刷ラボ」にご相談ください。